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海のいどころ
私たちの中には海があります。
私たちは海を探す旅人です。
海はどこに居ますか。
人は社会という目まぐるしい外的世界から自分という存在のあり方を求める時に、自己の中、つまり内的世界に深く潜り込みます。
潜り込んだその先に大きな世界が待ち受けていたとします。
例えばそこは海の様な所かもしれません。
海は隔たれた大陸を繋ぐ一続きの塩水で覆われた所ですが、事物が大量に集まっているという意味もあります。
内的世界へ潜り込んだ先で見つけた海は、情報と経験がカオス化しており、原初的な世界が存在しています。
そして新たな陸地(外的世界)へ接続していく場である様に思えます。
日々を自覚的に更新し続ける者として海は目標点であり通過点なのです。
出展する二人のアーティスト、羽山まり子と有木岑生は、社会と自己(存在)の曖昧な位置関係に揺れる不安定な心を受容しながら、
交わりきらない溝のような原初的な世界を生み出す条件を見出しています。
それはすれ違う事や平行を辿る事ではなく、ねじれの位置の様な立体交差に近いものです。
立体交差では、質の異なったものが対流していき、個として自立するためのエネルギーを放出する場となります。
人間としての活力を失わないために、私たちは今まさにこの立体交差の存在に気づき、能動的に足を踏み入れる必要があります。
本展覧会におけるゲルオルタナというスペースは、アーティストが信じている何かへの理解の場ではなく、
「外」から「内」へ潜り、次の「新たな外」を求める者が探す「海のいどころ」という劇場的装置となるでしょう。
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