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地上よりはるか下から見上げた灯りが月じゃなくても美しい
...例えば、夜中、井戸のような大きな穴に落ちたとします。
底から見上げた先からぼんやりと光が差し込んでいました。
その光は鮮明な力はないものの「全体」を照らすように視界を支えました。
ふと思い出したのは今朝のニュースで、今宵は満月である、ということ。
決意して穴から這い上がる事にしました。
地上へ出ると月は曇り空に隠れ、辺りは平凡な夜そのものでした。
そして、周りを見渡すと一本街路灯が立っているだけでした。
穴の底から見えた光は月ではなく街路灯だったのです。
展覧会タイトルとなる「地上よりはるか下から見上げた灯りが月じゃなくても美しい」は、
「美しい」と思うことへの不変を伝える意識があります。
本展覧会は田中良太、小島章義、松本玲子の三名の作家により構成されています。
それぞれ、絵画を主に取り扱い、安定のない選択肢を経て機微に触れることを求めています。
そのようなある種の営みは作家にとっては鍛練となり、おのずと信憑性となります。
美しいとは価値に基準はあるのでしょうか。
その判断は、信じた者がその通りに伝えれば誰かが近い感覚を受けとる事でしょう。
Direction / Text : 田中良太
「地上よりはるか下から見上げた灯りが月じゃなくても美しい」
小島章義、松本玲子、田中良太による三人展
2016 / KOMAGOME1-14cas / 東京
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